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【感想】蟲師 第一話 緑の座

最近「蟲師」が気になって遅ればせながら見始めました。
感想というか考察を書いていきたいと思います。

まず緑したたる、といおう言葉がぴったりな山々の描写に惹かれた。
森の奥にひっそりと佇む家、そこに住まう不思議な少年――この構図は物語の中ではよくあるものだけれど、そこにはある種の異界、云うならば山中他界とも呼ぶべき領域がある。
この種の物語、つまり旅人が山中にある異界へ入り込み、その土地に暮らす人間と超現実的な体験を共にするという話の構図は泉鏡花の「高野聖」を思わせる。
泉鏡花が好きな人間としては、そうした舞台設定を目にしただけで惹きつけられてしまうのだが、もう少し冷静にこの作品を見てみよう。
私は先に山中他界と称したが、これは不思議な少年・しんらの祖母が、亡くなった後も人と蟲との中間にある存在としてしんらの目付役をしていることからも窺える。つまり死者の霊が山中に留まっているのだ。

やがて物語は主人公の少年からその祖母へと主役が移る。
彼女が加わった蟲たちの宴に目を向けてみると、儀式という色合いが濃い。盃の光酒(こうき)を飲み干せば、生物としての法則を失い、蟲になってしまうという。
そこには黄泉戸喫(ヨモツヘグリ)のようなはたらき、つまり異界のモノをくちにすれば元の世界には戻れないという制約に共通するものがあるのではないか。
物語では蟲になったことで孫のしんらの目に見えるようになり、共に暮らせるようになった祖母の姿が描かれるが、そこには人ならぬものの住まう異界をさらに人里から遠ざけてしまうという結末につながる。
ゆえに人里ではしんらの噂が絶えてしまうのだ。
一見ハッピーエンドに見えるが、その実は人の世から隔たった異界をさらに閉ざされたものにしてしまうという一抹の恐ろしさを含んだ結末となっている。
つまりこの物語はギンコの異界(冥界)訪問譚となっているのである。
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夕星桔梗

Author:夕星桔梗
元日本古代史ゼミ所属。作家志望のアマチュア物書き。

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