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【感想】ハチスノイト“Universal Quiet”

Universal QuietUniversal Quiet
(2014/11/13)
ハチスノイト

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『すべてが「声」のみで作られた、夢中夢、magdaraのボーカリスト「ハチスノイト」初のソロアルバム。
それは実験的ポップスか、儀式、それとも現代の賛美歌か。』

クラシカル、民俗音楽、ウィスパー、ポエトリーリーディング等を昇華した独自の歌唱解釈で確立された荘厳で圧倒的な歌世界。聴くものに恐ろしいほどの感動を伝える「異端の賛美歌集」、全10曲をリリース。

深層心理療法家の顔を持つハチスノイトの今作の作曲方法は、メロディー・ささやき・吐息・舌音などありとあらゆる「声」を録音、さらに縦横無尽で自由なエレクトロニクス処理を駆使することによって、彼女の故郷・知床を思わせる圧倒的に美しい自然や神聖なアニミズム的世界の音楽を作り上げる。

それは実験的ポップスか、儀式、それとも現代の賛美歌かーー。(Amazon 内容紹介より)



彼女の歌声は夢中夢“イリヤ Ilya”を聴いて知っていたのだけれど、今回のアルバムはOfficial teaserが公開されて以来、とても楽しみにしていた。


声のみで音楽を作るという実験的な試みであるとともに、冒頭のkamuy mintarから伝わってくる神秘性、続いてmatematikaのメルヘンティックなかわいらしさ、そしてsacre du printempsの不穏な趣。
きっと今までに体感したことのない音楽体験が待っているのだろうと、発売日が待ち遠しくてCDを初めて予約した。

そして今日、サイン入りのポストカードと共に届いたCDの封を開け、早速聴いてみるとやはりkamuy mintarの神聖な雰囲気に圧倒された。題名のkamuy mintarとはアイヌ語で「神の遊ぶ庭」という意味とのことだが、知床出身だというハチスノイトの自然の中に息づく神々への敬意がそのまま音楽になったと思われるような曲で、収録作品の中でも特筆すべき存在感を放っている。
おそらくこの曲が入っていなければ、私がこのCDを買うこともなかっただろう。未だ見ぬ知床の自然の奥深くにまで分け入っていくかのような音楽体験に、心が震えた。

続いてsacre du printempsは美しさと狂気が見事に融合した音の響きに恐怖すら覚えた。声と声が重なり合って不協和音を奏で、それらが万華鏡のように変化していく様は歪んでいながらも美しい世界の摂理を感じさせる。
地球の呼吸を音楽にしたら、きっとこんな風になるのではなかろうか。大地の鼓動や潮のうねり、時に穏やかに、時に荒れ狂う風の吐息。ハチスノイトの見ている美しいだけでない、恐ろしい世界を感じた気がした。

Festiは打って変わって愛らしい音の連なりが柔らかい猫の鳴き声のようで、小さな子供時代に感じていた世界に戻ってしまったような錯覚を覚える。暖かくも力強い母の旋律と、甘えるような子供の旋律とが入り混じり、邪気のない空気感を作り出す。無害でありながらも、母と子の閉ざされた世界の中は他者の目を拒む。他者がそこに入ろうとしても、二人の世界は狂ってしまったママゴトにしか見えない。
時折、往来で幼子に幼い口調で話しかけるまだ若い母親の姿を目にするが、あの姿を見てしまった時のような、懐かしさと後ろめたさが入り混じったような気持ちになった。

matematikaの雪が降りしきる童話の世界に迷い込んでしまったような旋律は、いとおしくも切ない。どこかノスタルジーを掻き立てるのだけど、大人になってしまった私は、もう決してその世界には戻れない。昔は絵本の世界に入り込んで遊んでいたはずなのに、今となっては雪が降り積もった村の家々の戸を叩くことはできず、窓の外から暖かな家の明かりを眺めるばかりだ。そんな私の耳に、家の中からかすかに聞こえてくる賛美歌。歌っているのは小さな女の子で、そろそろ村では待降節の準備が始まる――そんなイメージ。

全曲のレビューを書くには少々長くなってしまいそうなのでこの辺にしておくとして(収録作品の後半より前半の方が曲の個性が強く密度が濃いような気がする)、全体的にハチスノイトの世界に引き込まれてしまう曲が多かった。
この冬は何度も何度も繰り返し聴くことになるだろうという予感がする。
そのたびに彼女の描いた世界に迷い込み、深く深く囚われてしまって、そう簡単に抜け出せそうにない。
今まで聴いたポストクラシカルというジャンルのCDの中でも屈指の名盤になりそうだ。
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夕星桔梗

Author:夕星桔梗
元日本古代史ゼミ所属。作家志望のアマチュア物書き。

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