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蛇と防疫

先月28日、千葉県南房総市和田町仁我浦で民俗行事網つりが行われたことを知る。稲わらでつくった大蛇を飾り、疫病除け・魔除けを祈願する行事だという。
またその後栃木県小山市で間々田のジャガマイタという民俗行事が行われていることを知る。この行事では五穀豊穣・災害消除・悪疫退散を祈願するという。
さらに千葉県匝瑳市時曽根で時曽根の大蛇まつりという神事が行われていることを知る。この行事では家内安全・無病息災・悪魔退散などを祈願するとのこと。
上記三つの祭りに共通するのは大蛇を祀っていること、そして疫病除けを祈願しているという点。
大蛇と疫病との関係が気になり、考えてみることにした。

そこでまず頭に思い浮かんだのは奈良時代の二条大路木簡だった。
「南山之下有不流水其中有 一大蛇九頭一尾不食余物但食唐鬼朝食三千暮食 急々如律令」
この場合の唐鬼とは当時流行していた天然痘を指す。大蛇に疫病除けを祈願するというファクターは重なっている。
以前大学の日本古代史ゼミでこの木簡について発表したことがあったが、その時教授が「この一大蛇九頭一尾というのは八岐大蛇のことだ」とおっしゃっていた。八岐、つまり八つの股を持つ=頭が九つあるということらしい。
だが八岐大蛇は元々水神であり、疫病除けの神ではない。では疫病除けと大蛇との関係はどこから来たのだろうか。
そこで考えたのが八岐大蛇と関わりの深い、防疫神としてのスサノヲの存在だった。茅の輪くぐりに見られるように、スサノヲは防疫神の性格を持っていたと考えられる。中世以降になるとスサノヲは牛頭天王と習合し、ますますその性格を強めていく。
スサノヲの八岐大蛇退治の場面がクローズアップされ、やがて八岐大蛇だけが残ったために大蛇に疫病除けを祈願するようになったのではないか。
また間々田のジャガマイタの起源とされる八大竜王の中には、和修吉(ヴァースキ)という九頭龍が存在する。八大竜王は雨乞いの神だというが、なぜそこから疫病除けを祈願するようになったのか。和修吉と八岐大蛇とがリンクしたと考えることはできないだろうか。これらは推測に過ぎないので、もっと詳しく調べてみたい。

2014.04.06追記
もう何年も前に読んだ松村武雄『日本神話の研究』に、八岐大蛇とスサノヲが重なっているという指摘がなされていたことを思い出したので、書いておく。

(…)八岐大蛇の本質的な素性は、水・農耕に関係の深い一つの神であつた。そして我が素尊は、邪悪な害物としての大蛇を艾除する人文的英雄である以前には、さうした神としての大蛇の一つのdoubleであつたとすべきこと、切言すれば、水・大地の生成力としての畏き神八岐大蛇が素尊の相そのものであつたとすべきこと(…)――松村武雄『日本神話の研究』第三巻、培風館、1955年、p216

このオーバーラップは、スサノヲと八岐大蛇とが分離して、八岐大蛇がスサノヲに退治されるまでを指しているけども、その後の両者の関係も切っても切れないものだったのではないだろうか。
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夕星桔梗

Author:夕星桔梗
元日本古代史ゼミ所属。作家志望のアマチュア物書き。

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