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谷崎潤一郎『吉野葛・盲目物語』

吉野葛・盲目物語 (新潮文庫)吉野葛・盲目物語 (新潮文庫)
(1951/08/14)
谷崎 潤一郎

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「盲目物語」
盲人の語りという体裁で描かれる戦国絵巻は悲しく美しく無常を物語る。
ねんごろな文体は心の奥まで染みとおるようで、久々に物語を読む悦びを感じられた。谷崎の文体ってこんなに美しかったんだと驚き。
物語としても、元々お市の方には心惹かれるものがあったので、すっかり引き込まれてしまったし、主人公の弥市と谷崎オリジナルの登場人物・朝露幹とがお市を救おうと三味線を使って暗号をやりとりする場面は情趣に溢れて見事だった。
谷崎はこの場面が書きたかったんだろうなぁ。やっぱりこういう芸術の域にまで高められた小説が好きだ。

「吉野葛」
吉野というと和歌に詠まれたゆかしき地のイメージがあったけれど、この吉野葛はまた違った魅力を教えてくれたように思う。南朝の面影や古典芸能や和歌の響きが重なり合い、響き合って美しい織物のような作品に仕上がっている。
義経千本桜の初音の鼓のイメージから津村の亡き母への思慕が導き出され、稲荷を信仰していた津村の母の家へと繋がっていく構成には芸が光る。
亡き母を想う子というと源氏物語を想起させるけども、未読である谷崎の「亡き母を恋うる記」も気になってしまう。

これまで読んだ「痴人の愛」「刺青」「秘密」「猫と庄造と二人のおんな」「春琴抄」からはエゴイスティックなマゾヒストだなぁという印象を受けたけども、『吉野葛・盲目物語』を読んで、改めて谷崎という作家の確かな技量を感じることができた。
日本の歴史や古典文学・古典芸能に根ざした彼の作品をもっと読んでみたいと思う。
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夕星桔梗

Author:夕星桔梗
元日本古代史ゼミ所属。作家志望のアマチュア物書き。

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