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斎藤英喜『新しい「日本神話」の読み方 古事記 成長する神々』

古事記 成長する神々―新しい「日本神話」の読み方古事記 成長する神々―新しい「日本神話」の読み方
(2010/03)
斎藤 英喜

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この本では神話学の視点から日本神話の古層に迫っていくというスタンスが貫かれており、読んでいて終始知的好奇心を刺激された。
中でも神話におけるシャーマニズムの問題については以前から関心があったので、斎藤先生の巧みな論理展開にぐいぐいと引き込まれてしまった。三浦佑之先生といい、私の好奇心を惹きつけてやまない先生方の論考はなぜこうも魅力的なのだろう。
たとえばのちにオホクニヌシとなるオホナムヂの神話における、地下世界での過酷な試練をクリアしていく物語は、「王」となるためのイニシエーションであり、その基底にあるのはシャーマンの成巫儀礼であると斎藤先生は説いている。
これはゼミ教授による大学の講義でも学んだことではあったが、他にもイザナキは黄泉つ国=他界での「死」のイニシエーションを経験し、あらたな存在へと変成するシャーマニックな性格をもっている、アマテラスは元々の戦うシャーマンとしての姿から皇祖神へと成長していく……などなど、シャーマニズムに視点を当てた神話分析は多岐にわたっている。
「シャーマニズムとは、神話生成の現場であったのだ」と斎藤先生が記しているように、神話が成立する過程においてシャーマニズムは多大な影響を及ぼしているのだろう。
これからもシャーマニズムに関する勉強を続けていきたいという思いを強くした次第だ。

また日本書紀との比較の中で古事記を分析していて、前者が中国思想を規範としたグローバル指向な史書であったのに対し、後者はローカル指向の立場から書かれた書である(ただし中国の陰陽思想を取り込みつつ、そこからローカルな神話を再構築したもの)という違いがあることを踏まえた論理展開でわかりやすかった。
さらに「地上世界の支配は、つねに異界からのバックアップを受けねばならない」とする異界と地上世界との関係性も明確に説かれており、異界に興味のある私にとって何となくファンタスティックに捉えられていた神話世界がきちんと定義づけられたことに感動を覚えた。

そして何より私がこの本で賛同したいのは、古事記=女性差別的とする視点に対する斎藤先生の論駁だ。

あらためて、「女性差別」という観点の成り立ちを考えてみると、その前提となっているのは、人間はすべて平等であるという近代思想であった。人間は男も女も平等だという近代的な価値観が出来上がるから、女性差別という批判が出てくるのだ。だとすれば、近代以前の八世紀=古代に作られた『古事記』の神話に、そうした近代的な価値観を押し付けて、差別的だと非難するんは片手落ちではないだろうか。あくまでも『古事記』は、古代に成り立った神話テキストなのだから。

一部の記紀神話関連の研究文献を読んでいて感じていた違和感は、まさしくこの問題に関わることだった。私もまた古代の女性観を現代的な視点から非難するのはいかがなものかと思っていたので、この文章を読んでやっと胸のつかえが取れたように感じた。
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夕星桔梗

Author:夕星桔梗
元日本古代史ゼミ所属。作家志望のアマチュア物書き。

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