FC2ブログ

【書評】山尾悠子『増補 夢の遠近法 初期作品選』 感想メモまとめ




「夢の棲む街」
まさに奇形静物博覧会とでも云うべき登場人物たちと、ちりばめられたフェティシズム薫るモチーフ(星座・奇形の天使・人魚など)にうっとり。『ラピスラズリ』の雰囲気とはまた違う山尾悠子の世界を味わえて大いに満足。
最後は伝説にも出てきた水没ENDかと思いきや裏切られた。
あるいみ建築物フェチな山尾悠子らしいかな、とも思う。
この作品に合う音楽はクラシックではなくmatryoshkaかなと思う。
特にzatracenieのジャケットは奇形の少女のコラージュだし。



月蝕
このひとの描く日本はあまり好きになれないというか、どこか俗っぽい文体だったこともあり、またストーリーの展開もありきたりだったので期待はずれだった。
この作者にはやはり幻想の中の西洋か架空の国が似合う。建築物フェチな一面を発揮するには日本は不釣り合いだし。
それから少女の夢をどう活用するのかなと楽しみにしていたのだけれど、ひとつのファクターとしてしか表現されていなくて肩すかしを食らった気分。
もちろん主人公の前に現れた少女そのものが幻だったという意味では幻想性を付与しているけれど、私だったらもっと違う風に料理するかなぁ。


ムーンゲイト
もろに私好みの一作。
蛇モチーフとか月とか水上都市(しかも宗教都市)とか。
キャラクターも魅力的だし、読みやすさを兼ね備えながらも山尾悠子らしい世界が広がっている。
世界の崩壊はこのひとにとってやはり大事なテーマのようで、だんだん先が読めるようになってきてしまったけれど、それでも読ませる力を失わないのが山尾悠子という人の力量を示している。
それから月に関して云えば完全に西洋的思考(狂気や死の象徴)に基づくものだなぁと感じた。


遠近法
小説という体裁を半ばかなぐり捨てつつも、まるでいにしえの伝承のような、ひとつの神話のようなスタイルを感じさせて好印象な一作。
円筒形の巨大な建築物は誰しも一度は夢想するのだなぁとしみじみ思った(私もかつて妄想したクチである)。
やはりこの作品も崩壊END。
ここまで来ると山尾悠子を崩壊へと駆り立てるものは一体何なのだろうと興味をそそられる。
カタルシス? それだけでは語れないような気も。


パラス・アテネ
足の萎えた少年神が輿に載せられ、あるいは人の腕に抱かれて他の土地神を滅びへと追いやり、年を重ねてもその力は衰えることなく、商隊から王宮、そして千年帝国へと金品で取引され、挙げ句の果てに彼が赤い繭の正体、つまり破壊神となる……。
まさにこれぞ神話、と云わざるを得ないが、設定だけこうして書き出してみると明らかに山尾悠子のこじらせぶりが分かる。(褒め言葉)
まさかこんなに美味しい作家だったとは思いもしなかった……。山尾悠子おそるべし。
そしてこの物語には続きがあるらしい。いずれも作品集成に収められているとのことだが、残念ながら未完だという。
また未完の傑作を知ってしまった……。


童話・支那風小夜曲集
私が書きたいのはこれだったのだ、と思わせるシノワズリ風の掌編群。
特に風俗の描写の美しさに魅了された。
全編をとおして佳作に仕上がっているが、なかでも中国の吸血鬼の話や纏足の貴公子の話などは山尾悠子ワールド全開といった様相を呈していて惹きつけられた。
中華趣味の話は私もこれからどんどん書きたいと思っていたところだったので、励ましをもらったように思う。
執筆意欲のないときに再読したい。
そしてこの作品はどこか倉橋由美子の短編を思わせる。両者の影響関係に関してはネットで聞きかじった程度だが、なかでも『酔郷譚』や『倉橋由美子の怪奇掌編』はスタンスとしてはかなり近いのではなかろうか。


私はその男にハンザ街で出会った
ホモきたーーー。
このほのかに薫るエロスのにおい……たまりません。
建物フェチは相変わらずでエレベーターに落とし込むラストが憎い。
良質な幻想BL小説にまたひとつ出会ってしまった。
「ムーンゲイト」の銀眼、「パラス・アテネ」の豺王の描写を読んでいて、腐女子の萌え所のツボを的確に突いてくるので「このひともしや……」と思っていたのだけれど、やっぱり山尾悠子、腐女子だったのね。
おいしゅうございました。


月齢
山尾悠子、少年神(それも美少年)好きすぎだろう……と思いつつ読んだ。
「透明族~」にも通じるような侏儒の気持ち悪さは折り紙つき。
どこからこうした発想が生まれてくるのやら……悪夢的ですらある。
思うに山尾悠子の小説は一種の悪夢譚(そんな言葉はないが)だと思う。


眠れる美女
眠れる美女といえば真っ先に浮かぶのは川端康成の同題作だが、こちらは童話チックな語り口になごみつつ読み進めていくと、物語は美から醜へ急展開を魅せる。
美と醜、エロスとタナトス――対立する二つの事象が奏であうのはそれでもやはり美なのだ。


天使論
まさかここでバルザックの「セラフィタ」が出てくるとは……ちょうどバルザックを読んでいる彼に教えてもらったばかりの小説だったからタイムリーだった。
洋館建築をテーマにしている分、同じ日本が舞台ではあっても「月蝕」よりは好感触だが、掌編にしてはそこまでキレがない。
山尾悠子は中編~長編向きの作家だと感じた。


山尾悠子の作品にぴったりだと感じたBGMはこちら。


一昨年前の記事で紹介したので詳細はゆずるが、この雰囲気といい曲調といいまさに山尾悠子の世界。
山尾悠子の作品がお好きな方、世界観に浸りたい方にはおすすめしたい。
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

夕星桔梗

Author:夕星桔梗
元日本古代史ゼミ所属。作家志望のアマチュア物書き。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
twitter
Booklog
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR