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【読書録】2015年のベスト10冊ならぬ8冊および総評

1|コーマック・マッカーシー『ザ・ロード』

2|ウニカ・チェルン『ジャスミンおとこ』

3|シルヴィア・プラス『ベル・ジャー』

4|マグリット・ユルスナール『東方綺譚』

5|石川淳『紫苑物語』 

6|澤田瞳子『満つる月の如し』

7|村上春樹『職業としての小説家』

8|吉川忠夫『古代中国人の不死幻想』



今年は歴史小説・時代小説との出会いにはじまり、海外文学との再会で終わった。

歴史小説・時代小説ではなによりも澤田瞳子と出会えたことがなによりの収穫であった。『若冲』がこの時代小説がすごい! に選ばれたことも喜ばしいニュースのひとつだろう。私が澤田瞳子と出会ったのは4月のこと。それまで積んでいた『日輪の賦』を皮切りに、『満つる月の如し』『ふたり女房』『泣くな道真』とまさに作者買いならぬ作者読みしていった。『若冲』もいずれ読んでみたいが、それよりも気になっているのは『与楽の飯』。私自身日本古代史を専攻していたこともあって、江戸時代よりは平安時代以前の小説に引かれてしまう。
そして歴史小説といえばやはり司馬遼太郎。今年はとうらぶブームもあり、へし切長谷部にハマったこともあって『播磨灘物語』を読んだり黒田官兵衛にまつわる新書を読んだりした。
個人的なブームは長くは続かず今ではすっかり審神者も卒業してしまったが、昨年の大河ドラマ『軍師官兵衛』を観ていたこともあり、戦国ブームはまだ衰えそうにない。
来年の大河ドラマ『真田丸』は視聴予定なので久しぶりに古巣の武田に戻るのもいいかもしれない……と思っているところ。

そして今年は数年ぶりに海外文学に戻ってきた。海外文学というといささか食傷気味になっていて遠ざかっていたのだけれど、今年読んだ海外文学はことごとく当たりだった。
まずは積んでいたマグリット・ユルスナール『東方綺譚』を読破したことで海外文学への抵抗感は幾分和らいだし、なによりコーマック・マッカーシー『ザ・ロード』と出会えたのは僥倖だった。終末SFという体をなしていながらも静かに綴られていく退廃的な世界観とわずかな光が差す結末は美しく、ひとつの神話とでも云うべき仕上がりになっている。
ちょうど体調の悪かった折りに出会ったこともあり、久しぶりに「本に救われる」という体験を味わうことができた。
シルヴィア・プラス『ベル・ジャー』とウニカ・チェルン『ジャスミンおとこ』はいずれも心を病み自殺を遂げた女性詩人の小説。新作の参考にと読みはじめたのだが、どちらからも得るものが大きかった。その成果は新作の小説のなかに取り入れ、ひとつの作品としてまとめ上げたいと考えている。

今年残念だったことは近代文学との良い出会いがなかなかなかったこと。主立った代表的な作家の代表作はだいぶ読んでしまったこともあるのだろうが、川端康成『反橋・しぐれ・たまゆら』『美しさと哀しみと』や谷崎潤一郎『蓼食う虫』は彼らの第一級の作品と比べるとどうしても格が落ちてしまう。
そういう点において石川淳『紫苑物語』を読了できたのは意義深かった。これまで文体厨とは云ってもどちらかというと泉鏡花や谷崎潤一郎のようなやわらかな美に目が行きがちだったけれども、石川淳の硬質な美しさは彼らとはまた違った魅力がある。
もう何作か彼の作品を読んでみたいものだが、まだめぼしい作品には出会えていないのが残念だ。

そして今年は村上春樹とも出会ったのだった。これまで村上春樹というと食わず嫌いしていたところがあったのだが、『職業としての小説家』を読んで彼に抱いていたネガティブなイメージが払拭された。読んだ当時は「雪花物語」の推敲中で、行き詰まりを覚えていたところだったので村上春樹の推敲する際の姿勢には勇気づけられた。
その後『ノルウェイの森』を読んだのだが、私自身はそこまで直子の死に衝撃を受けることはなかったし、心動かされることもなかったように思う。むしろ登場人物たちが主人公の身の回りからどんどんいなくなっていくさまがリアルだなぁと感心した。……とここまでは良かったのだが、村上春樹の感染力というのはおそろしいもので、私の場合小説を無意識に書いていると彼の影響が出てしまうようだ。
それはおそらく世界をどう捉えるかというベクトルに惹かれてしまったからなのだろうと思う。どうにかそこから脱却したいところである。

最後に私は小説を書く際の資料として、また趣味として9冊の学術書を読んだが、なかでも吉川忠夫『古代中国人の不死幻想』との出会いは改めて中国の引用文化、愛書文化への憧れを駆り立てられた。それだけでなく曹操や孫権、嵆康、陸機と古代中国の著名人の神仙観を垣間見られるという三国志および晋代の詩人好きにはたまらない内容で、これほどストライクな学術書と出会えた縁に感謝したい。秋の神保町の古本市で偶然出会った一冊だったが、間違いなくあの古本市で買った本では一番の掘り出し物だろう。来年の古本市ではどんな本に出会えるか、今から期待に胸が膨らむところだ。


やや疲れているので今年のベスト10冊をブログにまとめるのは先送りにしようと思っていたが、書きはじめてみるとキーボードを打つ手が止まらなくなってしまった。
来年も良書佳作との出会いを楽しみにしたい。
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夕星桔梗

Author:夕星桔梗
元日本古代史ゼミ所属。作家志望のアマチュア物書き。

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