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【映画鑑賞】「ミツバチのささやき」



繰り返される死のイメージと映像詩とでも云うべき断片的なシーンが重なり合って、幻想と現実の境界がぼやけたような美しい映画だった。私は近ごろ夢のように美しい映画を観たいと思っていたので、この映画はまさに当たりだったというわけだ。
どこかもの寂しい情景の連続は、スペイン内戦後という時代背景をそのまま映し出そうとしたものだろうか。灰色がかった空に荒れ果てたような大地が印象に残った。荒涼として美しい風景は、この物語を紡ぐのにこれ以上ない舞台背景だったように感じられる。

物語の主人公はアナ・トレント演じるアナという少女。彼女の視点に沿って物語が展開してゆく。子どもたち特有のあどけなさと、それに裏打ちされた残酷さ。中でもイサベルが猫の首を締め上げようとして怪我をし、傷ついた指先の血を唇に塗るシーンにはぞくっときた。
彼女はかりそめの死を演じてみせるなど、子ども特有の残忍さを滲ませる。それが逆説的に幼い少女の美を体現しているように思えてならなかった。
そして、それまで子どもから見た世界を描いたように抒情的だったシーンの連続は、負傷兵とアナとの出会いによってひとつの物語へと動き出す。中でも負傷兵の死はアナの心に衝撃を与えるに至った。これは子どもと不条理な現実との出会いを見事に象徴するシーンだった。(中でも小道具として使われていた懐中時計がよく効いていた)
その後アナは再び幻想の世界へと迷い込んでいく。フランケンシュタインの精霊と邂逅し、このままアナは死んでしまうのかと思いきや、彼女は生を選び取る。負傷兵とアナとは大人と子ども、男と少女、死と生、現実と幻想といった好対照な存在として描かれている。



そういえば主人公アナを演じるアナ・トレントといえば、クラフトエヴィング商會の『アナ・トレントの鞄』という本を思い出す。内容はうろ覚えなので再度読み返してみたいのだけれど、あいにくと手元にはない。
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夕星桔梗

Author:夕星桔梗
元日本古代史ゼミ所属。作家志望のアマチュア物書き。

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