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三浦佑之『口語訳 古事記―神代篇』

口語訳 古事記―神代篇 (文春文庫)口語訳 古事記―神代篇 (文春文庫)
(2006/12)
三浦 佑之

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去年講談社学術文庫版の古事記上巻を読んで、再び記紀神話について学んでみたくなったので、大学教授の薦めもあり手に取った。語り部の古老による語りという形式は肌になじみやすく、「語りの論理に生きる」古事記本来の姿を呼び覚ますことに成功している。また時々挿入される古老の独白が物語を生き生きとさせていて、登場する神々の息づかいを感じさせてくれる。

古代より読み継がれてきたこの書には様々な問題点があるが、私の興味の対象としてはまずシャーマニズムが挙げられる。
古事記に登場するシャーマンといえば、まずはアメノウズメが想起されるが、斎藤英喜氏によればアメノウズメが仕えたアマテラスもまた「戦う女性シャーマン」であるという。暇乞いをしに高天原に昇ってきた荒ぶる神・スサノヲをアマテラスは武装して迎え撃つ。その姿は「数多くのタマを髪の毛や腕に巻きつけ、邪霊から身を守り、弓を振りたてて悪霊と対峙するシャーマンを彷彿させる」と斎藤氏は記している。
また日蝕の神話化とされる「アマテラスの岩屋ごもりの神話はシャーマンたちが死んだ太陽を呼び戻そうとする呪術儀礼と考えられる」というのだから興味深い。これは古事記が成立する過程で当時のシャーマニックな要素を多分に吸収していったためと考えられる。

さらに斎藤氏によればオオクニヌシもまたシャーマンであったという。オオナムヂの根の堅州国訪問の神話はシャーマンの成巫儀礼を神話化したものだと斎藤氏は説く。出雲を舞台としたオオクニヌシの神話では、動物たちがいきいきと活躍する。

動物たちとコミュニケーションし、彼から幾多の知恵を得るオオクニヌシ。そうした世界を物語る『神話』を知った者は、自らもまた動物の秘密、その知恵を自由にする力を得ることになる。(中略)宇宙、世界や事象の起源を語る神話とは、世界、物事すべてについての秘密の『知識』を構成する、きわめて実践的な言葉としてあったのだ。その秘密の『知識』を手に入れる者こそ、シャーマンであった」


つまり神話を抜きにしてシャーマンは語れないが、神話もまたシャーマンを抜きにして成立し得ないということなのだろう。
その他にも、古事記にはタカクラジというシャーマンが存在する。また丹塗矢型神話として名高いセヤダタラヒメもシャーマンであり、三輪山伝承に興味のある私にとっては重要なファクターである。

また私が関心のある問題を挙げるとすれば、異界訪問譚が挙げられる。
中でも常世については以前から関心があるのだが、谷川健一氏の本を多少囓った程度なので、これからもっと勉強してみたい。
それから物語として古事記を見た時、私が惹きつけられてやまないのは火遠命とトヨタマビメの物語だ。
三浦氏の解説によれば、海神の宮はクニ=大地ではないために「海神の国」とは呼べないという。この異界をめぐる問題をもっと掘り下げてみたい。

またfacebookにこの本の感想を投稿したところ、文芸サークルの先輩から大塚ひかり氏の『愛とまぐはひの古事記』という本をお薦めしていただいた。当時の「愛」というものが、近代以降に日本に流入した「恋愛」とどのように異なっていたのか、オオクニヌシとスセリビメとヌナカワヒメの関係や、火遠命とトヨタマビメの関係をどう説明づけているのか気になるところなので読んでみようと思う。

◇参考文献
岡部隆志・斎藤英喜他『シャーマニズムの文化学 日本文化の隠れた水脈[改訂版]』森話社、2009年。
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夕星桔梗

Author:夕星桔梗
元日本古代史ゼミ所属。作家志望のアマチュア物書き。

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