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長野まゆみ『あめふらし』

あめふらし (文春文庫)あめふらし (文春文庫)
(2009/08/04)
長野 まゆみ

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2015.04.08読了。
蛇というモチーフは私も好きなのだけれど、同じモチーフの繰り返しにいささか飽きてしまった。
それから話の繋げ方に粗が見える。場面が唐突に変化するのでまとまりのない印象を受けた。
彼女が世界観や青少年キャラの耽美さを重視する作家であることは、前回『雪花草子』を読んでひしひしと感じていたのだけれど、『雪花草子』と比べてこの『あめふらし』は力量不足(書きたいことに筆力が追いついていない)感を受けた。
『雪花草子』がとても良かっただけに残念。
それでも「空蝉」の「これから何が始まるんだろう」と読者を期待させる筆遣いはとても良かったし、一腐女子の端くれとしては市村×仲村と橘河×仲村を推していきたい(何を云ってるんだか)。

仲村はからだからからだへ、乗りかえる性である。それはすれちがいざまや、ちょっとした衝撃で意識を失ったときなどに、自分ではどうにもならない力によって前ぶれもなく起こる。いつごろからそうなのか、もはや思いだせない。こうして暮らす年月も数えていない。
 遠い昔は子どもであったような気がする。白練の衣を着せられて、鈴なりに錺花のついた笠をかぶる。紅白の花は神のよりしろだ。笠の頂にある千枚の花弁を持つ花が、もっとも尊い。子は笠をかぶった姿で参道を歩む。氏子たちはむらがって花を採ろうとする。多くの錺花を手にしたものほど幸に恵まれる。荒ぶる人々は笠のひもがからまって子どもの首をしめつけてもなお、奪いあいをつづけた。
 その後、老いた樹の根元に埋められたのだったか、埋められたのちに彼のからだから成りかわった樹が老いたのだかは忘れた。その樹の花は、咲いたのちに紅く染まって散る。誰か、花びらをあつめて枕をこしらえた者がいる。彼のタマシイはそこに宿って運ばれた。(…)

いくたびからだを乗りかえたのか、仲村はおぼえていない。歓びも哀しみも多くは忘れてしまった。ただ、現にタマシイをとどめているこのからだが、かつて誰のものであったかは承知している。橘河をお義父さんと呼び、そろいの指輪をはめていた人物だ。橘河の妻はしばしば長期の里帰りをする。どんな事情があってのことかはわからない。通い婚にひとしい。その留守宅で、橘川と義理の息子はいっしょに暮らしていた。(…)
橘川の義理の息子はささいな口論のはてに姿をくらまし、誰ひとり知る者のない土地で客死した。橘河は彼のタマシイをつかまえそこねた。あめふらしでものがすことはある。そのすきに、蛻となった男のからだに仲村が棲みついてしまったのだ。
「やどかり」pp.95-96

このいかにも民俗学チックな逸話と、仲村と橘河との関係性に私はときめきを覚えずにはいられない。それにしても繋ぎが唐突な感が否めないが。もう少し彼らの関係性を掘り下げていけば、いわゆるBLに近くなっていくのだろうが、著者は指輪というアイテムだけに彼らの関係性を象徴させる。そこがまた上手い。
これはあくまでもエンタメ小説なのだけれど、著者の筆致は純文学に近い。だからこそ私はこの長野まゆみという作家に惚れ込んだのであり、こうして文章を綴っていると他の作品も読みたくなってきてしまった。まんまと罠にひっかかったような思いだ。
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ご無沙汰しています

引っ越しの前後から体調を崩してしまい、ネットもなかなか繋がらない状態だったので長らくご無沙汰していましたが、ようやくネット環境が整い、こうしてブログ再開にこぎ着けました。
ただ、新居ではBSアンテナが取り付けられないためにBSが観られず、「古都浪漫こころ寺巡り」や「新日本風土記」等の記事はしばらく書けそうにありません。
両親に録画を頼んでいるので、数週間後れでのレビューとなってしまいそうです。ご了承ください。
しばらくは蟲師のレビューが中心になるかと思います。

それから長崎帰省記の続きも順次書いていこうと思っていますし、読み終えた本も何冊か溜まっているので、少しずつレビューを書いていければと考えています。

さてこちらは宣伝ですが、私はnoteで掌編作品を投稿しています。
少しずつ数が増えてきたので、お読みいただければ幸いです。
https://note.mu/luna_moon
プロフィール

夕星桔梗

Author:夕星桔梗
元日本古代史ゼミ所属。作家志望のアマチュア物書き。

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