スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【読書録】読書状況報告

歴史秘話ヒストリアの「新選組 ボクらの友情と青春」を観て以来、怒濤の勢いで新選組にハマっております。
きっかけがなんともミーハーなんですが(元史学科生としてどうなのかというそしりは甘んじて受けます)、永瀬匡さん演じる沖田くんがもうタイプすぎて……。
あれよあれよという間に司馬遼太郎『燃えよ剣』を読破し、そのまま『新選組血風録』を読み終えて、すっかり彼の描く沖田総司像に惚れこんでしまいまして。
幕末というと高校時代から桂小五郎が大好きだったので、まさか今更新選組にハマろうとは夢にも思わなかったです。

というわけで積読本が増えました。

浅田次郎『壬生義士伝』上下巻、文春文庫





司馬遼太郎他『新選組読本』光文社文庫



子母澤寛『新選組始末記』『新選組遺聞』中公文庫




時代小説は自分の書くジャンルとかぶらないので、エンタメとして読むのにちょうどいいんですが、元々時代劇や大河ドラマが好きな性分なのでどハマりするみたいです。
しばらく積読本の消化に励みたいと思っています。

それから同じく新選組モノでPEACE MAKER 鐡をBook OFFで購入しました。


こちらは続きもののような幕開けで面食らいましたが、次巻を読めばだんだん慣れてくるの……かな。
今のところ、素はかわいいのに剣劇となると血相が変わる沖田くんがお気に入り。
新選組モノの漫画はもっといろいろ読んでみたいところです。

そして創作のあれこれにと、
金井美恵子『兎』筑摩書房


森茉莉『恋人たちの森』新潮文庫


を借りてきて、昨日金井美恵子作品を読みはじめたのですが、まず文体に親近感をおぼえました。私の詩のスタイルにも通じるような、酩酊感を与える描写と病んだ雰囲気がたまりません。
久々に「買い」な作家に出会えた気がします。
彼女はエッセイが多い作家でもあるので、そちらも読むのが楽しみです。

それから箸休めにと梨木香歩の『家守綺譚』を読みはじめたものの、だいぶ前から放置しています。
彼女の作品は小中学生の頃に読んだ『西の魔女が死んだ』以来ですが、繊細でみずみずしい作風に癒やされますね。
『f植物園の巣穴』も積んでいるので、そちらも感触がよければ作家買いも視野に入れたいです。




スポンサーサイト

【読書録】読書状況報告

これまであまり近況報告というものをしてこなかったことに気づきましたので、ひとまず読書状況の報告という名の自分メモをば。
なお、読書メーターの「読んでいる本」に登録した本は遠からず投げ出すか積み直すという個人的なジンクスがほぼ外れないので、定期的にこちらに書いていきたいと思う。

■読んでいる本
皆川博子『ゆめこ縮緬』集英社文庫、2001年。

感想は読後にまとめるので割愛。ひとまず買いは確定。
買うなら吉田良さんの人形がうるわしいハードカバー版がいい。

中西進『中西進と歩く万葉の大和路』ウェッジ選書、2001年。

万葉集に沿って古都・奈良を旅する学術エッセイ。
一般向けに書かれているのでかなり読みやすく、旅情たっぷりで手軽に奈良のことが学べる本とあって、体調が安定しない今の時期にはぴったりな一冊。
こうした本をもっと読んでいきたいところ。

■読みさしの本(放置中)
紀イン『閲微草堂筆記 上』平凡社ライブラリー、2008年。

 清代の怪異譚を集めた書物。いわゆる志怪小説のひとつ。『カラマーゾフの兄弟』を読みつつ併読していたが、最近は他の本に浮気気味。小説の種本としてはかなり面白いし、清代に興味を持つきっかけとなりそうな一冊ではあるが、いかんせん似たような話が多数収録されているために読み物としては飽きる。

末木文美士『日本仏教史――思想史としてのアプローチ』新潮文庫、1996年。

大学時代に一度読もうとして挫折した一冊。大学を出て日本古代を中心に宗教史を独学でやっていこうと志し、同著者の『日本宗教史』(岩波新書、2006年)を読破したはいいものの、まだ最初の方だけ読んで積んでいる状態。
ひとまず古代の箇所だけでも目を通したいところ。

■積んでいる本(図書館から借りているもので急を要するもの)
皆川博子『妖恋 男と女の不可思議な七章』PHP研究所、1997年。

図書館にはハードカバーしかなかったのだけれど、文庫版の表紙の方がかわいらしいので買うなら文庫かなと思っている。

塚本邦雄『定家百首 雪月花(抄)』講談社文芸文庫、2006年。


塚本邦雄『王朝百首』講談社学芸文庫、2009年。

ひとまず塚本邦雄の二冊は買おうかどうか検討するために借りたので、今回は読破せずともよいことにする。
なんとか個人的皆川博子まつりを完結させねば……。

■最近読み終わった本(先月のまとめを載せていなかったので読メから転載)
皆川博子『蝶』文春文庫、2008年。

昨年はじめて読んだ時の感想があまりに軽率すぎて「お前はいったい何を読んでいたのだ?」と自問したくなるレベル。それだけいろんな意味で成長したと思い たい。前回惹かれた「想ひ出すなよ」「幻燈」「遺し文」はもとより、改めて読んでみると「艀」「妙に清らの」の抒情的な美しさが心に響いてきて、象嵌され た詩や絵画のモチーフが一枚のコラージュ画のように浮き上がってくる。一連の物語の尺でめくるめく美の世界にいざなう皆川博子の力量には恐れ入った。積読 本を読んでもっと彼女の世界に圧倒されたい。

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟 中』新潮文庫、1978年。

体調を崩していたために読了までに一ヶ月もかかってしまった。物語の本筋としては中盤~終盤が見所なんだろうけども、個人的にはゾシマ長老の経歴やア リョーシャの内面の清らかさに心惹かれる。なかでも大地に接吻するシーンは一幅の絵画を思わせて、私自身ミッションスクール出身ということもあって胸が高 まるのを感じた。先に『カラマーゾフの兄弟』を読んだ彼が「どのシーンに惹かれるかでその人の傾向がわかる」と云っていたけども一理あるのかもしれない。

灰原薬『応天の門 5』新潮社、2016年。

やはりこの作者は描き方が緻密というか、市井の様子から宮中の様子まで見事に描写し、なおかつ両者がうまくリンクして物語が綴られているというところが最 大の見所なのかもしれないと思う。ひとえに菅原道真のキャラあってのことなのだろう。物語の本筋としては政治劇が主題となっているけども、それを下支えし ているブレーンの知識はさすがプロフェッショナル。応天門の変の結末が分かっているだけに、その途中経過がどのように描かれていくのかますます楽しみに なってきた。

谷崎潤一郎『文章読本』中公文庫、1996年。

どうしてもっと早く読まなかったのだろう、と長らく積んでいたのを悔やんだ一冊。私はこれまで美文というと言葉の限りを尽くして描写することに尽きると 思っていたのだけれど、「言葉や文字で表現できることとできないことの限界を知り、その限界内に止まる」ことを説いた谷崎の言葉にハッとさせられた。源氏 物語をはじめ、もっと日本の古典文学を読んでセンスを磨いていきたい。


ちなみにブクログに『カラマーゾフの兄弟』と『文章読本』の引用をまとめておいたのでこちらも併せてどうぞ。


【読書録】2016年2月の読書録

2016年2月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:1030ページ
ナイス数:75ナイス

日本宗教史 (岩波新書)日本宗教史 (岩波新書)感想
大学時代に日本古代史ゼミで記紀神話を専攻していたので、律令制成立以降の宗教史に関心を抱いて読んだ一冊。古代の箇所は指導教官による指導に重なる部分が多々あってするりと読めたが、中世以降の仏教思想のくだりが難しかった。私が興味があるのは近世までの宗教史なのだなと再確認。それでもキリスト教とそれまでの既存宗教を完全に分けて考えていた身としてはそれらの相互関係が不可分なものであることを学べただけでも収穫だった。長崎出身で大学がカトリックなのでキリシタン史に関しては基礎知識があるが、仏教の勉強をもっとしてみたい。
読了日:2月28日 著者:末木文美士
集中講義織田信長 (新潮文庫 (お-70-1))集中講義織田信長 (新潮文庫 (お-70-1))感想
書かれたのが十年以上前ということもあってか、今ではすでに通説となっている信長像をわかりやすくも丁寧に描き出している。特に安土城のくだりは歴史秘話ヒストリアの「信長の楽園へようこそ~3つの城のサプライズ~」でも放映されていたとおりだったのでこれが種本だったのかと気づいた。信長の研究は日進月歩で進んでいるので次はより新しい本を手に取ってみたい。また戦国史初心者としては人物史よりも先に戦国史そのものを概観する本を読む必要性を痛感したので、近いうちにその分野の本を読むことにしたい。
読了日:2月22日 著者:小和田哲男
バレエ・メカニック (ハヤカワ文庫JA)バレエ・メカニック (ハヤカワ文庫JA)感想
ホモ描写あるからあげる、と彼に手渡された一冊。そういうわけでトキオくんを終始追いかけるようにして読みました。第三章でまさか多重人格の集合体になるとは……。SFではよくある設定ですが、その唐突さには驚きました。それでも最後は彼の個人的体験に集約されていくラストがなんとも好みです。脳内でアニメ化しつつキャラ小説として読むのは邪道なんでしょうが、その分SFな世界観に呑み込まれつつも読み進めやすかったかなぁと思います。このキャラがここでこう繋がるのか!という面白さも味わえたので。ちょうどいい息抜きになりました。
読了日:2月16日 著者:津原泰水
新釈古事記 (ちくま文庫)新釈古事記 (ちくま文庫)感想
スサノヲにはじまり、オオクニヌシ、神武にヤマトタケル、神功皇后に雄略まで。古事記というよりは石川淳セレクトの古事記人物列伝といった体裁をなしており、時にはユーモアを交えた生き生きとした筆づかいが伝わってくるようだ。はじめて古事記を読む人にはおすすめできないが、古事記の筋書きをあらかじめ踏まえた上で読むと石川淳のヒロイックでますらをぶりなフェティシズムが伝わってくるようで楽しめる。小説の参考資料にと読みはじめたが、あっという間に全編読み終えてしまった。
読了日:2月5日 著者:石川淳

読書メーター


読破冊数はかなり落ちたものの併読をはじめて一ヶ月が経ち、その効果を改めて実感している。
併読は読み終えるまでに時間がかかってしまうけれど、私の場合本を手にする機会は格段に増えた。
また併読をする上で隙間時間を利用して本を読むようになったのだが、これが存外効果的だった。
まとまった時間を読書に充てるよりも集中できるようになったのだ。
そうした状況下で先月中頃からドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を読み始めたのだが、他の本と併読することでより読みやすくなっていると感じている。
気分に合わせて読む本を選べるというのは幸せなことだなぁと思わずにはいられない。

もちろん併読に向いている本とそうでない本はあるのかもしれない。
気づいたのは短編小説と長編小説を組み合わせたり、小説と手軽に読める学術書を組み合わせたりすると有効だということ。
短編小説や学術書がスパイスとなって良い気分転換のひとときを与えてくれるのだ。
もともと日本近代文学に入り浸っていたこともあり、長編を読む体力がそれほど身についていない私にとって併読の効果は大きいようだ。
これからも併読スタイルで読書を楽しむことにしたい。

【読書録】2016年1月の読書録

2016年1月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2269ページ
ナイス数:183ナイス

反橋・しぐれ・たまゆら (講談社文芸文庫)反橋・しぐれ・たまゆら (講談社文芸文庫)感想
反橋三部作のみ再読。古典や古美術に仮託して「私」の出生を語るという小説。古典作品にリンクさせて母恋の物語を紡ぐという手法は谷崎「吉野葛」にも見られるが、いずれも味わい深くて大好き。特に琴の音が現実世界と物語世界を共鳴させる箇所は詩的で美しく、また琴の爪で背中を掻いてもらうシーンは何度読んでも官能的(この手のエロスは川端の十八番だよね)。初読時には他の作品に惹かれてこの作品群の良さが半分くらいしか分からなかったが、今回再読して文句なしに川端作品の中でも際だって優れた作品だと感じた。
読了日:1月31日 著者:川端康成
紫苑物語 (講談社文芸文庫)紫苑物語 (講談社文芸文庫)感想
日本神話をベースにした小説が読みたくなり「八幡縁起」のみ再読。ひらがなを多用した文体といい、長歌といい(「沫雪の~胸」という表現がもろに「あわ雪の わかやるむねを」というヌナカハヒメの歌に一致)、やっぱりかなり古事記を意識しているなぁと思った。山の神というとどうしても崇神天皇段の三輪山に鎮まる大物主を想起してしまう。母の出自の設定はもろに活玉依毘売っぽいし。男装した玉姫は天照大神かなぁなどと妄想して楽しかった。初読時は「紫苑物語」が一番好きだったけれどこちらもなかなか。
読了日:1月31日 著者:石川淳
シャベール大佐 (河出文庫)シャベール大佐 (河出文庫)感想
読書会のテキストとして「シャベール大佐」を読み、続けて「アデュー」を読了。初めてのバルザックということで多少値踏みしながら読みはじめたのだけれど、特に「シャベール大佐」の冒頭部には時を超えても色あせぬセンスを感じた。当時で云うところの「人間喜劇」は喜劇というよりまさに人間の生きざまそのもので、悲喜こもごもの人間模様を骨太に描く手法は古典ならではの楽しみなのだろう。どちらかというと悲劇的な「アデュー」の方が心に残ったのは、私が文学的白痴フェチだからなのだろうか。今日の虚飾に満ちた狂気よりも美しさを感じた。
読了日:1月30日 著者:オノレ・ド・バルザック
日の名残り (ハヤカワepi文庫)日の名残り (ハヤカワepi文庫)感想
はじめは英国執事のうやうやしい語り口で物語られる、在りし日の輝かしい英国の話かと思ったが、読み進めていくうちにこの執事・スティーブンスの人間性に憐れみを掻き立てられていった。ミス・ケントンとの再会がスティーブンスを長い眠りから目覚めさせた終盤はとても美しくまとまっていて、特に海を見ながら涙するシーンは映画のワンシーンのように叙情的ですらあった。ゆったりとしたペースで読み進めていったこともあり、あたかもスティーブンスと旅をしているかのような心地を味わえたのも嬉しかった。
読了日:1月26日 著者:カズオイシグロ
職業としての小説家 (Switch library)職業としての小説家 (Switch library)感想
原稿が二進も三進も進まず、文学仲間に批評をもらったものの冷静になれずにいたので「とんかち仕事」の箇所のみ読み返そうと思ったのだが、気づけばどんどん読み進めていた。いつの間にか忘れていた「小説を書いていて楽しい」という気持ちの大切さを改めて教えてくれた村上春樹に感謝したい。原稿と向き合う勇気をもらえた気がする。道は険しいけれどもう一度立ち向かおう。やはりこの本は私にとってのひとつの「処方箋」なのだ。また道に惑ったときには何度でもこの本を読み返したい。
読了日:1月23日 著者:村上春樹
増補 夢の遠近法: 初期作品選 (ちくま文庫)増補 夢の遠近法: 初期作品選 (ちくま文庫)感想
「ラピスラズリ」に引き続き、著者の小説を読むのはこれで2冊目。描写のこだわり方が昔の自分と似ているなぁと感じながら読んでいたこともあり、「あ、こんな風に書いていいんだ」とずいぶんと励まされた。短編ごとの感想はブログに書くので割愛するが、特に「ムーンゲイト」「パラス・アテネ」の神話のような重厚感にはほれぼれしたし、特に建築物の描写など全体的に著者のフェティシズムをありありと感じさせていたので、読んでいて「この人こういうの好きなんだろうなあ。私も好き」とこちらも共感したり萌えたりしながら読めて楽しかった。
読了日:1月22日 著者:山尾悠子
3年の星占い 射手座 2015-20173年の星占い 射手座 2015-2017感想
Twitterで毎日石井ゆかりさんの占いを拝見していて、言葉のやわらかいチョイスが好きだなぁと思い、昨年購入したあと一読したきり放置していた。2016年になって再読してみると昨年のことはだいたい当てはまっていたし、なにより今年の9月に夢やチャレンジ、仕事がチャンスを迎えるというメッセージは私が引いたオラクルカードのメッセージとぴったり重なりドキっとした。それと健康面で気になっていたことがまさに的中。いやはや恐れ入った。今後は定期的に熟読しよう。
読了日:1月13日 著者:石井ゆかり
ラピスラズリ (ちくま文庫)ラピスラズリ (ちくま文庫)感想
一昨年ごろに読んで「竈の秋」で挫折、その後はしばらく本棚で眠りについていたが幻想文学を読む契機が巡ってきたので再び手に取った。フォーレ〈レクイエム〉モーツァルト〈交響曲第40番〉バッハのソナタなどをBGMにして読むとこの上もなく心地よい読書体験を味わうことができた。以前は筋を追って読もうとしたが、今回はワンシーンごとの描写を心ゆくまで味わえたのが何よりもよかった。冬眠や人形など死のイメージが繰り返される世界で、ひときわ建築美が際立ったのは作者の好みが反映されているのを感じられて好印象。
読了日:1月5日 著者:山尾悠子

読書メーター


今月はなによりも山尾悠子と再会できた歓びを味わえた。
今年中に作品集成を入手したいところ。

それから海外文学にも手を伸ばせたし、それとともに日本近代文学の名作を再読できたのもよかったと思う。
日本近代文学沼からはしばらく離れようと決めていたが、先日観た『犬神家の一族』の琴が印象的で川端の「反橋三部作」を再読することになり、また創作の一助にしたいと石川淳「八幡縁起」を改めて読んだ。
どちらの作品も再読することでより深く物語を味わうことができ、また本を所有する意義を見いだせたので(これまであまり再読してこなかったので)今後とも積極的に再読本を取り入れて行きたい。
さらに「反橋三部作」を読んだことで谷崎『吉野葛』が恋しくなってしまったので、近いうちに再読したい。
また昨日の大河ドラマ「真田丸」で久々に個人的信長ブームが来たので、信長関連の積読本を崩すとともに谷崎の『盲目物語』も読み返したくなった。

というようになかなか日本近代文学沼からは離れられそうにない。
海外文学の積読本も溜まってきているので併読して崩していくつもりではいるが……。
もうちょっと軽い本も織り交ぜていきたいところだし、読書欲が膨らむばかりだ。

【書評】石川淳「八幡縁起」(再読)

■石川淳「八幡縁起」(『紫苑物語』講談社文芸文庫所収)


前回読んだ時にはひとつの物語として味わったが、今回は日本神話という着眼点で再読。
改めて読んでみると、随所に古事記からの影響が看取できる。

文体
ひらがなを多用した文体は古事記を想起させる。むろん古事記が編纂された当時にはひらがなは存在しないが、万葉仮名という意味では、漢語を元にした日本書紀とは大きく異なる。これは古事記が文字として読まれるよりも誦習という形で伝わったというところに起因する、と三浦佑之氏は書いておられる(注1)。
ひらがなを多用することで、古事記における万葉仮名と同じく日本語の「音」のリズムを生み出す効果があるのは確かだろう。

長歌

堅岩の
大室屋の
岩ぶすま
堅き誓に
すくすくと
わが出て行かば
青山に
綾垣なす
草ぶすま
さやぐが下に
若草の
つまの真玉手
玉手さしまき
ぬばたまの
夜ごとに寝む
朝日の
のぼるも知らに
さ野(ぬ)つ鳥
とよむも聞かずて
三つ栗の
中の色濃く
沫雪の
わかやぐ胸を

かきいだき
いだきたわむれ
股ながに
裳をなさば
よらしな

これは石別の娘、鮎が詠んだ歌だが、「沫雪の~胸」はヌナカハヒメの返歌

あをやまに 日がかくらば
ぬばたまの よはいでなむ
あさひの ゑみさかえ来て
たくづの 白きただむき
あわ雪の わかやるむねを
そだたき たたきまながり
またまで たまで差しまき
ももながに いはなさむを
あやに なこひきこし
やちほこの 神のみこと
ことの 語りごとも こをば(注2)


に共通点が見いだせる。

登場人物
・石別の妻
正体は白蛇、ということで蛇と関わりの深いイクタマヨリビメやヤマトトビモモソヒメを彷彿とさせる。
石別の妻は蛇と女とが一体となっているのが面白い。

・男装の玉姫
ここはやはりスサノヲを迎え撃つ際に男装したアマテラスを想起せずにはいられない。

・武
父王へのエディプスコンプレックスを抱き(母は出てこないが)、王位を争う兄を殺すという構図は神話の類型としてよくあるもの。
特に兄との王位争いは崇神天段の日嗣の決定の場面など古事記には多々見られる。


そしてもうひとつ見逃せない要素である山の民=木地師という構図は柳田國男の山人論の影響が看て取れる。
さらに彼らが里の人間たちに対して「まつろわぬ民」であることには神話的要素が多分に含まれていると云っていい。

この物語は被征服民から見た支配者の歴史とも云えようし、あるいは神話から歴史へと変換していくさまを物語へ落とし込んだ見事なパロディとも云えよう。

また神というものに着眼してみるならば、荒玉と広虫の次の会話が鍵となろう。

「いつき祭らねばならぬのは、かの名なしの神じゃ。」
「なんと。敵なる神を。」
「さきほどのあやかしを見て、おそれのこころを兆したとでも、おもいおるか。左(さ)にあらず。聞け、広虫。われら、わずかにこの尺寸の地をえたのみにて、小成にやすんじてはならぬ。国はまだまだひらけるぞ。いや、ひらいて見しょう。国つくりはこれからじゃ。打ちしたがえるべき山山は数かぎりない。行くところの地には、かならずやその地に古き神神はあろう。またその神神を信ずるやからがあろう。力なき神は取るにたらぬ。ひとに畏怖の念をいだかしめるほどの神ならば、取ってもってわが神とすべし。すなわち、その神を奉ずるやからのこころを取ると知れ。そのやからとても、ひらけゆくわれらの国の、あらたに附く民じゃ。神も人も殺すべきものは殺し、生かすべきものは生かせ。これを生かして使えば、いつかはわれに利があろう。みだりに功をあせるな。大国を治めるの法は、今までのごとき尺寸の地のあらそいとはちがうぞ。かのほろびた山の神をいつき祭るというは、やがてわがものとする四方の山を治め水を治めて、ひろく国つくる手だてとはさとらぬか。」

これはまさに被征服民の神を征服者が祭祀という形で支配する構図に他ならず、古事記で云えば崇神天皇によるオオモノヌシの祭祀に象徴されるだろう。

こうした結果この物語でいう「八幡神」が生まれ、源氏などの支配者によって奉祭されていくものの、被征服民である山の民は意に介さないと物語られるのが面白い。

「げに、われらの大神につかえるためにこそ、みこころを世にひろくこなおうとて、おれは岩屋を出て武者とはなったぞ。大神につかえる道、おれもこたりはせぬ。」
「なにをもって、つかえるというか。」
「武をもって。」
「武をもってつかえるは、われらの大神ではない。」
貞光、いぶかしげに、
「異なことをきくものじゃな。八幡といえば、武の神ではないか。これもとより、むかしながらのわれらの大神。」
老人、かぶりをふって、
「なに、八幡。知らぬ。いずれの神じゃ。われらの大神には、もとよりおん名は無いものを。」

石川淳による日本神話へのある種の皮肉とも取れる。
神話が古事記という形で編纂される以前、つまり歴史以前の時代にはおそらく名もなき神々がごまんといたのだろう。
石川淳は「八幡縁起」を通じてその神々を描き出そうと試みたのではなかろうか。


注1:三浦佑之『口語訳 古事記 神代篇』文春文庫、2006年、272頁。
注2:注1文献、120-121頁。
プロフィール

夕星桔梗

Author:夕星桔梗
元日本古代史ゼミ所属。作家志望のアマチュア物書き。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
twitter
Booklog
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。